健康について(1)健康とは形、働きが正しいこと

健康の図 体のこと

治療を通して多くの方の体を見させていただき、またこれまで体のことについて勉強したり、情報を集めたり、自分なりに考えたりしてきました。ここで一度、「健康」とはどのようなものかについて、まとめてみようと思います。

「健康」とは次の3つが満たされている状態のように思います。

  1. 体の外側や内部の、形や構造が正常である
  2. 体の各部分の働きが正常である
  3. 体を動かすのに必要な資源が揃っている

それぞれについて説明していきます。

健康の図

1、体の形や構造が正常である

私たちの体は、まずは物質的なものでできています。皮膚、筋肉、骨、内臓、脳、感覚器などです。このような体を組み立てている様々なものの形や組み合わせが正しいことが、まず健康には必要なことだと思います。 例えば皮膚が全身をきちんと覆っていなかったりすると、バイ菌が体の中に入り放題となりすぐに体調を崩してしまいます。また脳からの神経が途中で切れていたり正しい位置に繋がっていないと、手足を上手く動かせなかったり、内臓がうまく動かなかったりします。このように、体のそれぞれの部分の形や構造が正しことが健康の大前提です。

また、形や構造が大まかに正しくても、炎症が起きていたり腫れ物(腫瘍)ができていたりすると、それも健康とは言えません。炎症や腫瘍の程度が小さければ問題はないのでしょうが、大きくなるとその部分の形が大きく変化して本来の働きを発揮できなくなり、痛みや不具合が出るようになります。

ちなみに、このような炎症や腫瘍など、また他にも組織が傷ついたり、性質が変化したりなどの形や構造の変化は、後で挙げる「体の働き」が正常で「資源が豊富」であれば体が自然に修復していきます。元の形に戻るかどうかは、体がその部分を修復するスピードと、その部分が変化するスピードのどちらが速いかで決まってくるのだと思います。

2、体の働きが正常である

次に見ていくのは、体の各部分の働きです。内臓や脳など体の全ての器官が正しく働いていないと健康は保てません。例えば心臓の血液を送り出す働きが強すぎると、頭痛が出たり、血管が破れやすくなります。逆に弱すぎると全身に十分な酸素と栄養素が送られず、これも問題があります。消化器の働きが悪くなると、食物から十分な栄養素をとれなくなってしまいます。このように体の形や構造に問題がなくても、体の働きが正しくないと健康とは言えないのです。そして体の働きに深く関わるのは、酸素と栄養素と水と正気(せいき)です。

正気は体を動かすエネルギー

体を動かす材料として、まずは酸素と栄養素が挙げられます。体の全ての細胞は酸素と栄養素をエネルギーとして消費して、それぞれの働きを行っています。そして水は酸素や栄養素が全身にくまなく行き渡るのに必要なものとなります。現代医学では酸素と栄養素とそれらを運ぶのに必要な水をエネルギー源と考えていますが、東洋医学の面からみると、これらに加えて正気が必要となります。

先に「私たちの体は物質的なものでできている」と書きましたが、実際には私たちの体には物質的なものだけでなく、気的な部分もあります。物質の体と気の体が重なって、私たちの体は作られています。

体の構成

心臓には心臓の気がありますし、腎臓には腎臓の気があります。脳や脊髄神経にも気があります。また気には種類があって、体に必要な気を正気、体に害を与える気を邪気と呼びます。全身に酸素と栄養素が足りている状態で、体のある部分に正気が十分にあれば、その部分が正しく動き、本来の役割を発揮するようになります。正気は体を動かすエネルギーの一つなのです。

(普段から気に触れる機会の少ない方は、この文章を読んで戸惑っておられるかもしれません。ですが、気は一般に思われているほど遠い世界のものではなく、とても身近で、私たちは日々の生活で何気なく気に触れたり、気を動かしたりしています。ただ気の感覚には個人差があって、多くの方が感じておられないだけなのです。ここでは物質の世界とは次元?を隔てて、気の世界があり、そこに正気と呼ばれるエネルギーのようなものがある、と思っていただければいいかと思います。

また気については次の記事にもまとめています。

タグ「気」のインデックスの「気について(1)〜(6)」)

心臓に正気があれば、血液を送り出す働きが正しくなり、消化器にあれば食物を分解、吸収する働きが正しくなります。また何らかの原因で炎症を起こしている所に正気が届けば、炎症が収まり、炎症によって傷ついた部分の修復が進められます。さらに病原性微生物がいる所に正気が届けば、白血球などによってこれらの体を害するものが無害化されます。このように正気が十分に足りていると、その部分が正しい状態になるように体の反応が進められるという、生まれついての働きが私たちの体には備わっています。

心臓の図

では正気はどのようにして体に入ってくるのでしょうか。正気は主に食べ物から体に取り込まれます。正気は生き物の気ですから、なるべく新鮮な動植物に多く含まれます。食べ物を口に入れると、食道を通って消化器に届き、消化器で分解されて正気が体に取り込まれます。そして取り込まれた正気は、経絡(けいらく)と呼ばれる気の通り道を伝って全身に行き渡ります。血液が血管を通って全身に行き渡るのとよく似ています。全身の正気の量が十分であれば、体の各部分の働きが正しくなって健康な状態へと近づくのです。

正気の流れを悪くするもの

体に正気が十分にあってもその流れが良くないと、体の働きは滞り、本来のパフォーマンスが発揮できなくなってしまいます。正気があるだけではダメで、正気が十分にあり、かつ流れが良くないといけないのです。ここでは正気の流れを悪くするものについて挙げておきます。

正気の流れと関係が深いのは、思いです。私たちの心の使い方に正気は影響を受けるのです。その中でも否定的な思いは正気の流れを悪くします。

  • 不安
  • 焦り
  • 怒り
  • 妬み
  • 憎しみ
  • 考えすぎ
  • 悲しみ
  • 驚き
  • 恐れ

これらの思いは正気の巡りを悪くして、体の働きを低下させます。気は流れているのが正しい状態で、滞ると性質が悪いものへと変化していきます。正気も停滞すると体を害する邪気へと変化しています。さらにこれらの思いが強くなると、特定の内臓に邪気が集中してその内臓の働きを阻害します。その状態が長く続くと病気へとつながっていきます。東洋医学では七情内傷という考え方があり、怒・喜・思・悲・憂・驚・恐の7つの感情が度を過ぎると、それぞれの感情と関わりが深い内臓を傷つけると伝えられています。東洋医学で言われていることはどの程度正しいか確認が必要だと思っていますが、上で箇条書きで挙げた否定的な思いが正気の巡りを悪くして、程度が過ぎると内臓の働きを阻害する、というのは今までの経験から正しいように感じています。

このように、私たちの心の使い方で正気の流れを悪くしてしまうことがあります。体の働きを良くしておくには、こういった否定的な思いを持たないように気を付けることが大切です。

この他にも正気の流れに関わるものとして、居住環境や人間関係などがありますが、ここでは割愛します。

(続く)