気について(6)正気と邪気②

体のこと

東洋医学ではよく気のことが出てきます。気については分かりにくいことが多いですが、このシリーズでは気についてできるだけ分かりやすくまとめようとしています。(あくまでの現段階での私の考えになりますが)

ここまで気とはどのようなものか、気の働きとは、気が体に入ってくるプロセス、などについてまとめました。

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今回は気の種類である「正気(せいき)」と「邪気(じゃき)」についての2回目です。前回、正気と邪気がどのようなものか見てきましたが、今回は正気と邪気が健康とどのように関係するのか考えていきます。

正気と邪気と健康との関係

前回まとめた通り、正気は体を動かすエネルギーで邪気は体の働きを邪魔するエネルギーです。ですので、正気と邪気と健康との関係はなんとなく想像がつくと思うのですが、正気が多くて邪気が少ないのが健康で、逆に正気が少なく邪気が多いのが不健康や病気、ということになります。ではもう少し詳しく見ていきます。

健康な時の正気と邪気

まずは体が健康なときの正気と邪気について見ていきます。体が健康な時は、正気が多くあって邪気は少なくなっています。正気は体を動かすエネルギーなので、正気がたくさんあると体の働きが正しくなり、体の各部分はそれぞれの役割をしっかり果たせるようになります。この状態であれば、体調が良く日々快適に過ごせます。さらに体の修復機能が正しく働くので、体の形の病的な変化(病変)が起きにくいということも喜ばしい点です。前回の記事にも出てきましたが、病変は肉体にも気の体にも悪い影響を及ぼすので、できるだけ避けたいものです。正気が多く、邪気が少なければ病変が起きることもなく、体にとって理想的な状態といえます。

機能的な問題がある状態

次に正気が少なくなり邪気が増えた場合を見ていきます。どうして正気が減るのかというと、例えば正気を多く含む食品をとっていないことや、正気を無駄遣いするような生活習慣を送っていることなどが考えられます。また邪気が増える原因としては、邪気を多く含む加工食品や農薬を使った食品をとっていること、さらに邪気を生み出すような否定的な感情をいつも持っていることなどが挙げられます。このような生活習慣を続けていると、体の中の正気はいつも少な目で、邪気が少し増えた状態になります。すると体の働きが低下して本来の働きを発揮できなくなり、色々な不具合が出るようになります。例えば胃の痛みやもたれ、消化不良や便秘、頭痛、手足の冷えやしびれ、生理不順などです。

この状態であっても10〜20代くらいの若い時期であれば、まだ正気の量に余裕があるので、一時的に不具合が出てくる程度で、大きく健康を害することは少ないと思います。調子がいい日があったり、そうでない日があったり、といった感じです。体の働きが低下していても、体の形の変化(病変)が起きていないため、調子の悪さが慢性的にならないのだと思います。このように体の形が正常で働きだけが低下した状態を、機能的な異常(機能的疾患)と呼んだりします。

機能的疾患になると元の健康な状態には戻らないのかというとそうではなく、そもそも正気が減って邪気が増えたために異常につながっているので、正気をしっかり増やして邪気を減らしていけばまた健康な体に戻ることができます。ここで一番大切なのは食べ物です。正気を多く含んだ新鮮なもの、旬のものを取るようにして、加工食品を減らすように気をつけましょう。また普段から邪気を増やさないように生活習慣を整えることも大切です。正気や邪気がどのように体に入ってくるかについてはこちらの記事にまとめていますので、参考にしてください。

気について(3)気はどこからやって来るのか①

気について(4)気はどこからやって来るのか②

器質的な問題のある状態

機能的な異常が出てきても、意識的に正気を増やして邪気を減らすことをしていかないと、徐々に体の修復機能が追いつかなくなって体の形が少しずつ変化していきます。腫瘍や潰瘍などの病変はこのようにして作られます。この時の体の中の正気と邪気は、正気は少ないままで、邪気が増えてしまっています。そして出来てしまった病変は、その種類やできる場所によって体の働きを邪魔することがあり、そうなると慢性的な調子の悪さが出てきます。例えば、大腸にできたポリープによって便通が悪くなったり、胃の潰瘍などによって胃の痛みが出てきたり、などです。神経の通るルートに脂肪の塊や骨の突出などができると神経痛が出てきますし、内分泌器官に腫れ物ができるとホルモン物質が増えすぎて様々な影響が出てきます。このように病変は肉体としての体に影響を及ぼし、そして病変が厄介なのは、邪気を生み出して気の体にも影響を与えるところです。周囲の正気の流れを悪くして働きを低下させ、また修復機能が十分発揮できなくなるので病変自体も治りにくくなるし、周りに広がったり、別の病変ができる可能性もあります。

このように機能的な異常だけでなく、体の形に変化が起きた状態を器質的な異常(器質的疾患)と呼びます。器質的疾患になってしまった時にどのようにして健康に戻していくか、という点ですが、結局は正気をしっかり補って、邪気を減らしていくことしかありません。先の機能的疾患の場合はまだ健康な体に戻りやすいのですが、器質的疾患になってしまうと元に戻すのには時間がかかります。十分正気を補うことを続けると、軽い炎症や粘膜の荒れ程度であれば数日で消えていきますが、腫瘍などハッキリした形を持った物になると変化させることはなかなか難しいです。また多くの場合はこういった病変に繋がる邪気を体に抱えているので、邪気を取り込んでいる場合はその生活習慣を、邪気を生み出している場合は考え方の整理をしていかない限りは難しいように思います。

現代医学の処置について

器質的疾患などの場合には現代医学の処置が頼りになります。薬で病変を小さくしたり、手術で取り除いたりという方法があります。正直なところ、腫瘍のように形を持ったものができて、それによる影響が大きくなってきたら、現代医学の処置を選択する方がいいように思います。正気を増やして邪気を減らす、というのが健康への道ではあるのですが、病気がある段階を過ぎると病気の進むスピードに体の治るスピードが追いつかなくなってきますので、そうなったときは迷わず現代医学を選択しましょう。

ただ現代医学の処置は体への負担が大きいことは心に留めておきましょう。まず薬ですが、薬は体に効果を及ぼす物質を高純度に精製したものです。つまり私たちの体が普段出会うことがない純度の高い物質ということになります。こういった高純度のものは効果が高いのですが、体で処理する際に多くの正気を消耗します。習慣的に飲み続けるのは体への負担が大きいので、病気の処置がひと段落ついたら体の状態を見ながら続けるかどうかを判断するようにするのがいいと思います。

また手術はもっと負担が大きく、どうしても必要な時まで取っておくほうがいいと思います。病変を取り除くという決定的な処置ではあるのですが、そのために体に入る傷(体の表面の傷も、内部の傷も)は大きなダメージとなります。まず傷を治すのに多くの正気が必要となります。食事などで体に取り入れるエネルギーの何割かは傷の修復に使われますので、その間はどうも調子が悪いという状態が続きます。この期間は年齢が若ければそれほど長くありませんが、高齢になると長期間に及び、よく耳にする「手術後なかなか調子が戻らない」ということになります。また時間をかけてようやく傷が塞がっても、残った傷跡で気の通りが悪くなりますので、何年か経って別の場所に不具合が出てくることがあります。例えば、若い頃に胃の手術をした方が歳を取ったら膝が痛くなったとか、盲腸の手術を受けて何年か後に股関節の調子が悪くなったとか、などです。体には経絡(けいらく)と呼ばれる気の通り道があって全身がつながっていますので、その一部を断ち切って通りの悪さを作ってしまうと他の部分に影響が及ぶことはよくあります。このようなわけで、手術は決定的な治療法ではあるのですが、あまり知られていないデメリットがあることを心に留めておいて、どうしても必要な時まで取っておく、というのがいいように思います。

もう一つ現代医学の処置について覚えておいてほしいことがあります。それは現代医学の手法はあくまでも対症療法ということです。現代医学が検査や治療の対象としているのは体の物質的な部分である肉体であって、その肉体に影響を与えたり変化を促している正気や邪気のことはあまり関知していません。つまり手術などで一度病変を取り除くことができたとしても、正気を増やすことと邪気を減らすことを行わないと、同じような病変がまた出来てしまう可能性があるのです。現代医学の処置を受けたから「健康」なのではなくて、健康な状態とは最初に書いた通り、正気が多く邪気が少ないということですので、病変を取り除いてもこのことを意識しておかないといけません。

普段の生活でできること

普段の生活では、正気を増やして邪気を減らすことを意識して、機能的疾患、器質的疾患に近づかないように生活習慣を整えていくのがいいと思います。もし器質的疾患にまで進んでしまったら現代医学の処置も選択肢に入れておくべきですが、その中でも手術はいざという時のためにとっておきましょう。そして現代医学の処置の有無によらず、健康への道筋としては「正気を増やして邪気を減らす」が正しい方向となることも覚えておいてください。

また普段から鍼灸治療などの気的な施術を受けて、体に正気を増やしておくこともおすすめです。正気を増やしておくことで、健康な状態を維持することができますし、特に器質的疾患になると出てくる病変による体調の悪さは、正気を増やすことで緩和させることができます。気的な施術で病変の部位に正気を増やしておけば、様々な不具合を軽減することができ、日常生活の質を向上させることができます。そういった点から定期的に鍼灸治療などを受けるのも一つの方法だと思います。このような施術とともに生活習慣を整えて、健康な体を目指していくというのがいいように思います。

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