気について(4)気はどこからやって来るのか②

道標 体のこと

東洋医学ではよく「気」が出てきます。この気とはどのようなものなのでしょうか。世の中には気について書かれたものがいくつかありますが、どれも曖昧で分かりにくいように思います。あくまでも私の考えになりますが、このシリーズでは気についてできるだけ分かりやすくまとめていってます。

ここまで気は一体どのようなものか、また気の働きについて触れました。

気について(1)気はどんなものか

気について(2)気の働きとは

気は私たちの体にあって、体の様々な働きに使われたり体調に影響を与えたりしています。そして気は次の4つのルートで私たちの体に入ってきます。

  1. 生き物や物質ごと気を取り入れる
  2. 環境から気を取り入れる(染まる)
  3. 体内に気を生じさせる
  4. 特別な技術で気を取り入れる

前回はこのうちの1、2についてまとめました。

気について(3)気はどこからやって来るのか①

今回は残りの3、4について書いていきます。

3、体内に気を生じさせる

先の1、2は体の外から気を取り入れる方法でしたが、3は体の中に気を生み出す方法です。体の中から気を増やすこともできるのです。

一つ目は「リラックス」です。リラックスすることで体に正気を増やすことができます。普通リラックスというと「ちょっと力を抜いて緊張を和らげる」というものですが、ここでのリラックスはもっと積極的に「体と心の力を抜く」というものです。「力を抜く」というのは一見簡単そうに見えて実際にやってみるととても難しく、特に心の力が抜けにくいと思います。でも上手に緩めることができると体の中に正気が増えてきます。そして力を抜けば抜くほど多くの正気が湧いてきます。

日々の生活や仕事の合間にこのリラックスを取り入れると良いと思います。しっかりと時間をとって行うのでなく、空き時間に少し力を抜くぐらいのやり方だと増える正気の量は少ないですが、同じ休憩時間でも考えごとをしたりネットサーフィンなどをするよりは、正気の消耗を抑えられ、逆に少し正気が増えるので体にいいのです。また心も体も緩んでいる方が何かと物事がうまく運ぶものです。日々の生活で消耗が激しいと感じておられる方は、少し練習してみると良いでしょう。

次に見ていくのはもっと簡単で、普段から誰でもやっている方法です。それは睡眠です。これについては本当に正しいか考え中ではあるのですが、今のところ、眠ると体に正気が増えるように感じています。私たちの体は睡眠中に体を修復するホルモンを出して、傷ついた所や調子の悪いところを治していきますが、それだけでなく、睡眠には気の面から見ても正気が増えるという良い効果があるのです。その意味でも夜更かしを控えて、しっかり眠るようにすることが大切です。

体の中から増える気は正気だけではなく、邪気も増えます。日常生活ではむしろこちらの方を注意したほうがいいように思います。体の中に邪気を生み出すものの一つに否定的な感情があります。否定的な感情は凝り固まっていて、気の流れを阻害してこれを邪気へと変化させます。例を挙げると、欲、怒り、妬み、不満、悲しみ、焦り、驚き、恐れ、思い悩み、落ち込み、などの感情です。東洋医学では七情内傷といって、喜・怒・憂・思・悲・怖・驚の7つの感情が度を越して激しくなった場合、体の臓腑(内臓)を傷つけると伝えられています。確かにその通りだと思いますが、ただ「喜」を除く6つの感情は激しさに関わらず邪気を生み出し、「喜」については激しくなければ問題はないように感じています。そもそも私自身「度を越えた喜び」というものに出会ったことがないので、想像するしかないのですが、今のところ喜びは激しくなければ大丈夫ではないかと思っています。

日々生活していると否定的な感情が心の大部分を占めてしまう時があります。そういった感情にとらわれないためにも、先ほどのリラックスは有効です。またこういった感情が生み出されるのは私たちの心に煩悩があるからですが、少しずつ煩悩を手放していくことも健康のためには大切です。

もうひとつ体の中に邪気を生み出すものがあります。それは腫瘍、炎症、潰瘍などの病変です。これらは体の働きの低下によって、体の形が変化した結果生み出されたものです。正気の不足、邪気の過剰などによって体の機能が低下してこういったものが生み出されますが、一旦生み出されるとそれ自身が邪気を発生させるようになり、周りに影響を与えるので厄介です。これらをなくすためには根気よく正気を増やして体の修復作用を高めるしかないですが、うまく効果が出ない場合や、時間的な制約がある場合は服薬や外科的処置も必要になると思います。

ルート分類正/邪例えば
3、体内に気を生じさせる行動リラックス
睡眠
思考否定的な感情(欲、怒り、妬み、不満、悲しみ、焦り、驚き、恐れ、思い悩み、落ち込み、など)
病変腫瘍、潰瘍、炎症など

4、特別な技術で気を取り入れる

ここまで体に気を取り入れる様々な方法を見てきました。ここからは誰でもが簡単にできることではありませんが、特別な技術を使って体に気を取り入れたり、体の中に気を増やす方法を見ていきます。

一つ目は瞑想です。瞑想というと何か宗教的なものを想像されるかもしれませんが、ここで取り上げる瞑想はもっと一般的で、先ほどの「リラックス」の延長にあるものです。リラックスで力を緩めると正気が増えてきますが、これを更に緩めていったものをここでは瞑想と呼んでいます。

体と心の力を少しずつ緩めていき、自分の体や意識が消えるぐらいまで緩めると、体の中にどんどんと正気が湧いてきて、全身が正気で一杯になり体の外に溢れてきます。内臓や脳、手足の先まで正気で一杯になり、体も心もスッキリして、視界が明るくなり気持ちが軽くなります。ここまでできるようになるにはおそらく何年もかかりますが、できるようになると、体調の悪い時や気持ちが不安定な時に自分自身を調整することができてとても役に立ちます。

二つ目は気功です。気功というと「人に気を飛ばす」のようなことが言われたりしますが、本来気功は自分の体に正気を増やしたり、気の流れを調整したりする健康法です。自分の体の調整という意味で内気功(ないきこう)と呼ばれたりします。気功のやり方にはいくつも種類があって、様々な流派がありますが、共通しているのは先ほどの瞑想によく似ていて、姿勢、呼吸、心の状態を調整しつつ少しずつ脱力していくというものです。瞑想と同じで習得するには何年もかかりますが、ライフワークとして続けていくのもいいと思います。

もう一つ体に気を増やす技術ですが、気的な施術を受けるという方法もあります。気功治療や鍼灸治療などがこれにあたります。治療としての気功は先の内気功とは異なり、自分以外の人に正気を与えたり、気の流れを調整したりする技術で、内気功に対して外気功(がいきこう)と呼ばれます。内気功の延長線上にある技術ですが、それだけではなく特別な訓練が必要となります。また鍼灸治療は様々な道具を使って気の状態を調整していきますが、治療法の中には体に正気を増やす技術もあり、そういった施術を行なっている治療院もあります。

気功治療も鍼灸治療もそれらを受けるメリットは、自分でやらなくても体に正気を増やしてもらえるという点です。ここまでいくつか体に気を増やす方法を紹介してきましたが、どの方法も身につけるには長い時間と訓練が必要となります。そういったプロセスを経ることなく、誰かに正気を増やしてもらえるのはとてもありがたいことです。ですが実はこういった気的な施術には少しリスクがあるのです。それは施術者によって扱う気の質が異なる点です。

気功治療も鍼灸治療も、施術で扱われる気は施術者自身の気を帯びるので、もし施術者が邪気をいっぱい持っているなら、せっかく施術を受けても体に邪気が入ってくることになります。施術を受けて邪気が増えてしまっては、ちょっと悲しいです。ただ気の質のことは施術者の間でもあまり意識されておらず、扱っている気に無頓着な施術者も少なからずいます。加えて施術を受ける側にも気的な感覚に優れた人が少ないので、施術で扱われる気のことが取り沙汰されることはまずありません。そのような訳で、気的な施術での気の質については放任されているのが現状です。

とは言っても、施術を受けるからにはやはり邪気でなく正気を増やしてもらいたいものです。そのためには施術者が信頼できる人物か十分吟味する必要があります。評判が良いことや、流行っていることなどが判断の基準になるかというとそうでもありません。実際に簡単なコースを体験して、その後の体調を見て判断するのが良いと思います。また気のことを尋ねてみるのも良いでしょう。日頃から気を理解し身を整えている施術者であれば、正気と邪気のことを知っていてコントロールする術を身につけていますから、きちんと対応してもらえるはずです。

ルート分類正/邪例えば
4、特別な技術で気を取り入れる行動瞑想
気功(内気功)
施術正・邪気功治療(外気功)
鍼灸治療

まとめ

2回に渡り気がどこからやってくるのかについて見てきました。いろいろなルートがありましたが、最も正気を多く取り込めて効率的なのは食べ物です。食べ物から取り入れるのが正気の量も多く、また同時に肉体を維持する材料である栄養素を取れるので、このルートを重視するのがおすすめです。できるだけ正気の多い食材(新鮮なのも、旬のもの)を摂るようにしましょう。

他にも正気に近い気を帯びたものを身につけたり、リラックスや瞑想で体に正気を増やす方法などもあります。同時に否定的な感情を控えて体に邪気を増やさないようにすることもとても大切です。これらを意識して、体に正気を増やして邪気を減らして、健康的に生活していきましょう。

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