東洋医学でよく出てくる「気」についてまとめています。気についてはいろいろなことが言われていますが、なかなかイメージが湧きにくく、捉えにくいものだと思います。このシリーズでは、あくまでも現時点での私の考えにはなりますが、気について分かりやすくまとめたいと思っています。
ここまで気がどのようなものか、また気の働きについて、気がどのようにして体に入ってくるかについて触れました。
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今回は、気の種類である正気(せいき)と邪気(じゃき)について書いてみます。
気には正気と邪気がある
ここまで書いてきた通り、気は生き物にも物にもあり、体や物質に重なるように存在しています。私たちの体は気をエネルギーとして使ったり、また気から影響を受けたりしています。そして気は、体に対する性質によって次の2つに分けられます。
私たちの体に馴染み、暖かく、心地の良い気が正気(せいき)で、体の様々な働きを進めるエネルギーとなります。体を動かすエネルギーとしては、現代医学では酸素、水、栄養素が必要とされていますが、気の体を見ていくとそれに加えて正気が必要ということが分かります。体で起こる全ての働きには正気が必要なのです。
反面、体の働きを邪魔する気もあり、邪気(じゃき)と呼ばれています。邪気は冷たかったり、ビリビリしたり、刺すような刺激感があったりします。体で邪気があるところは、働きがうまく進まなかったり、動きがおかしくなっていきます。体の本来の機能が失われて、多くの場合は痛みや違和感が生じ、この状態が長く続くと病気につながります。
このように気には大きく分けて、正気と邪気があります。ここからはそれぞれについてもう少し詳しく見ていきます。
- 気には正気と邪気がある
- 正気は体を動かすエネルギー
- 邪気は体を害するエネルギー
正気とは
正気は生命エネルギー
正気は一言で言うと生命エネルギーです。エネルギーというものは「それを消費することで何らかの働きを行わせる」というものだと思いますが、正気もその通りで「生物に生命活動を行わせるための資源」となります。
私たちの体は物質としての肉体と、気的な体が重なっています。体に2つの部分があるわけですから、体を動かす生命エネルギーにも、物質の体で使われるものと、気の体で使われるものの2種類があるのです。物質の体で使われるエネルギーは現代医学によって明らかにされていて、酸素、水、栄養素で(水はエネルギーというよりは媒体という役割がメインですが、ここでは生命エネルギーとして扱いたいと思います)、そして気の体で使われるエネルギーが正気ということになります。
体で行われる全ての働きに酸素、水、栄養素と正気が必要となります。つまり正気は、酸素、水、栄養素と同列に捉えることができて、「体を動かすエネルギー」の一つなのです。
- 正気は体を動かすエネルギー
- 正気がある所は体の働きが滞りなく進む
- 正気がない所は体の機能が低下する
正気の例
では実際の正気にはどのようなものがあるでしょうか。いくつか例を挙げておきます。
物質を伴うもの | 物質を伴わないもの | |
正気 | 食べ物、金やヘンプなど正気を帯びたもの | リラックス、睡眠、気的な施術などで生じる気 |
正気として代表的なのは食べ物です。食べ物はもともとは生物ですから、生命エネルギーとしての正気を多く含んでいます。他にも正気の例を挙げていますが、正気には物質を伴うものと伴わないものがあります。「物質を伴うもの」とは物質に重なるように正気が存在しているもので、先の食べ物はそれに当たります。例えばりんごを考えてみると、手に触れることができる物質としてのりんごがあって、それに重なるようにりんごの正気が存在しています。そしてりんごを食べると物質としてのりんごと共に、りんごの正気を取り込むことができるのです。
食べ物は物質の体に必要な栄養素と、気の体に必要な正気を含んでいて、物質の体、気の体の両方にエネルギーを供給することができる、優れたエネルギー源なのです。
また金やヘンプなども挙げていますが、これらは正気に近い気を帯びていて、こういったものを身につけると体に正気が入ってきます。こちらは食べ物のように口から飲み込むことはできませんが、帯びている気を取り入れることはできます。
物質を伴わない正気もあって、リラックスや睡眠などで体の中から増えるものや、鍼灸治療などの気的な施術で体に増やしてもらえるものなどです。これらは気的な世界にのみ存在していて、気の体に正気を増やすことができます。さらに詳しい正気の種類と、それらが体に入ってくるプロセスについては以下の記事にまとめていますので、そちらもご覧ください。
- 正気には物質を伴うものと伴わないものがある
- 食べ物は物質の体と気の体の両方にエネルギーを補う
邪気とは
邪気は体の働きを阻害するエネルギー
正気とほぼ逆の働きを持つ気が邪気です。邪気は体の働きを進みにくくする性質を持っています。先の正気とは異なり、消費されて何かを行うわけではないのですが、邪気は私たちの体や正気に干渉するという点でエネルギーの一種と考えられます。
邪気があると体の働きが進まなくなったり、おかしな動きをするようになります。邪気は物質の体に干渉したり気の体にある正気に影響を与えて、私たちの体に害を及ぼします。
- 邪気は体の働きを阻害するエネルギー
- 邪気がある所は体の働きが悪くなる
邪気の例
邪気についてもいくつか例を挙げておきます。
物質を伴うもの | 物質を伴わないもの | |
邪気 | 細菌、ウイルス、化学物質、低気温、高湿度、病変など | 否定的な感情(欲、怒り、焦り、不安など)で生じる気、邪気を帯びた場所の気など |
正気と同じく、邪気も物質を伴うものと伴わないものがあります。物質を伴うものの代表的なものが、細菌やウイルスです。細菌やウイルスは物質の体に直接作用して、細胞を破壊したり、細胞内で増殖したりして体に害を与えます。他にも低い気温や高い湿度なども挙げていますが、これらは目には見えませんが、空気分子の運動量の低さだったり、水分子の量の多さなどが体に影響を与えているので、物質を伴うものとして分類しています。化学物質も体に害を与える代表的なものです。物質的な面から体の働きを害して、さらに解毒のために余計な負担を体にかけるという点でも面倒な邪気と言えます。
腫瘍や炎症などの病変も物質を伴った邪気です。これらはもともとは正気の不足や邪気の過剰で体の形に変化が生じて生み出されたものですが、一旦生じるとそれ自身が邪気を発するようになります。こういった病変は物質の体に影響を与えますし、またこれらが生み出す邪気は周囲に影響を与えるので厄介です。
物質を伴わないものは気的な世界にのみ存在して、私たちの体の正気に影響を与えます。主に正気の流れを滞らせたり、正気自体の性質を体を害するものに変化させてしまいます。正気の流れが悪くなると、体を動かすエネルギーである正気の供給が減りますので、その部分の働きが低下します。また正気は淀みなく流れていることが大切で、流れが悪くなったり、停滞してしまうと性質が悪くなり、それが長時間に及ぶと邪気へと変化してしまいます。
物質を伴わない邪気の中には、体の中に直接発生するものがあります。否定的な感情によって生み出された邪気がそうですが、このような感情は体内に邪気を発生させ体を害します。普段生活しているとこういった感情は普通に持ってしまいがちですが、実はそれによって邪気が生まれていることは意識しておいた方がいいと思います。できるだけこのような感情から離れて生活するように気をつけることが大切です。さらに詳しい邪気の種類と、それらが体に入ってくるプロセスについては以下の記事にまとめていますので、そちらもご覧ください。(続く)
- 邪気には物質を伴うものと伴わないものがある
- 否定的な感情は体の中に邪気を生み出す
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