科学の進歩と共に、医学は発展してきました。今や現代医学は私たちの生活になくてはならないものとなっています。多くの方が、健康維持は現代医学だけで十分と感じられていると思います。ですが、私は現代医学だけでは不十分で、私たちの健康を維持していくためには、東洋医学が必要だと思っています。
どうして東洋医学が必要なのでしょうか。今回はその理由について書いてみます。
体の働きを正しくすることは東洋医学にしかできない
私が東洋医学が必要だと思う理由は、「体の働きを正しくすることは、東洋医学にしかできない」と思われるからです。
なぜ東洋医学にしかできないのでしょうか。それは、東洋医学は現代医学にはない、体の働きそのものにアプローチする、という特性を持っているからです。
と言うと、現代医学も薬で体の働きを調整しているじゃない、と思われるかもしれません。ですが、厳密にはそれは正しくないと思います。
現代医学は体の働きの正常化はできない
どういうことでしょうか。このことを説明するために、現代医学が行なっていることを詳しく見てみます。
実は現代医学が行なっていることは、「体の働きを正しくすること」ではなく、「体の働きがおかしくなったために生じた異常を改善すること」なのです。
例として高血圧について考えてみます。
高血圧は体のどこかの働きがおかしくなり、そのために起こった、「血圧が高い」という異常です。そして高血圧に対して、現代医学は、
- 血管を広げる
- 心拍数を下げる
- 尿の量を増やして体内の水分量を減らす
- 血圧を上げるホルモンの働きを抑える
といった作用を持つ薬を使って、血圧を下げようとします。
では、これらの対処法をよく見てみましょう。これらは、体の働きを正しくしているでしょうか。一見そのように思われますが、じっくり考えると、そうではないことに気がつきます。
最初の「血管を広げる」について見てみます。私たちの体は、血管に筋肉がついていて、その筋肉を制御することで、血管の太さを調整しています。
もし、血圧が上がっている原因が、「血管が適正な太さよりも細くなっていること」であれば、対処するべき点は、「血管を広げる」ことではなく、「血管の太さを制御する体の働き」の方になります。
(太いホースと細いホースに、同じ水流を流すと、細いホースの方が内圧が高くなります。血管の場合もこれと同じで、血管が細いと血圧が高くなります。)
ところが、現代医学の対処法は、血管の太さを制御する体の働き、ではなく、細くなった血管(=体の働きのおかしさのために生じた異常)に対してアプローチしているのです。
この対処法では、差し当たり血圧は下がりますが、血管の太さを制御する働きが改善されないので、いつまでも薬を飲み続けなくてはならない、という問題が生じます。
他の3つについても同様です。
このように、現代医学が行っている対処法は、体の働きの正常化ではなく、体の働きの不調によって生じた異常の改善、なのです。
では、なぜ現代医学は体の働きを正常化しないのでしょうか。それは、体の働きそのものにアプローチすることは、今のところ現代医学では難しいからです。
東洋医学は体の働きそのものを正常化する
これに対して、東洋医学は、体の働きそのものにアプローチすることができます。鍼灸や整体であれば、適切なツボを刺激して、内臓を含め、全身の働きにアプローチし、それらを正しい状態へと導くことができます。
こういった処置は、おそらく東洋医学でなければできないと思います。私が東洋医学が必要である、と思う理由はここにあります。
(現代医学と東洋医学のできることについては、こちらの記事をご覧下さい。現代医学のできること、東洋医学のできること)
現代医学と東洋医学のどちらも必要
では、体のことは東洋医学だけで十分なのでしょうか。いいえ、そうではありません。なぜなら、東洋医学は体の差し迫った問題への対処が苦手だからです。
これに対して現代医学は、東洋医学にはない、効果が早く出る、体の調整能力を超えた処置ができる、という優れた特性があり、体の差し迫った問題にも対処できます。
東洋医学はあくまでも原因に近いところの処置です。ですので、効果が現れるまでには時間がかかります。血糖値が高い、ホルモンが過剰に分泌されている、といった、早く異常を取り除かないと問題が大きくなってしまう状況では、効果が早い現代医学の処置が必要となります。
また、粉砕骨折している場合など、体のダメージが大きい時は、体の持つ調整能力では対処できない時もあります。その場合に東洋医学に任せていては、大きな後遺症が残る可能性があります。こういった時も現代医学の手を借りるべきだと思います。
現代医学と東洋医学の役割分担については、「森林伐採で山の保水力が低下して、洪水が起こりやすい」という状況への対処を考えると、分かりやすいと思います。
東洋医学では山の植林を行なって、保水力の回復を進めます。現代医学ではダム建設や治水工事を行なって、洪水が起こらないようにしていきます。
どちらが必要かというと、どちらも必要です。
このように現代医学と東洋医学は、どちらも必要なのです。
現代医学と同じくらい東洋医学を活用していこう
多くの方が、日々の生活で、健康管理として現代医学を活用されていると思います。私はそれと同じくらい、東洋医学を活用することをお勧めします。
東洋医学は、体の働きを正常化することができます。健康でも、病気をしていても、気になる症状があってもなくても、体がどんな状態でも東洋医学の施術を受けて、体の働きを正しくすることには意味があります。
ぜひ日々の生活サイクルに東洋医学を組み込んで、健康維持に努めてください。
