現代人には補法がおすすめ

体のこと

前回の記事で、東洋医学の治療方針である、補法(ほほう)と瀉法(しゃほう)について、簡単に紹介しました。今回はその続きで、現代人には補法と瀉法のどちらが良いのかについて、書いてみたいと思います。

現代人には補法がおすすめ

補法と瀉法のどちらが現代人には合うのか、というテーマに関しては、おそらく東洋医学に携わる先生ごとに、考えが異なると思います。その中で私の個人的な意見は、現代人には補法が良いのではないか、というものです。

その理由は、現代の生活環境は体への負担が大きく、多くの人は体の働きが低下しているからです。

では、どのようなものが体に負担をかけるのでしょうか、いくつか挙げてみます。

  • 食物
    今の日本は食物が豊富で、食べる物に困ることは無くなりました。ですが、現代の食物には、農薬と食品添加物が多く含まれるという問題があります。これらの化学物質は体に大きな負担をかけます。
  • 大気汚染
    排気ガス、工業排煙などに含まれる、窒素酸化物、硫黄酸化物などにより、空気が汚染されています。またPM2.5などの微小粒子状物質も体への負担が大きいです。
  • 電磁波
    携帯電話、無線LANなどによって、私たちの体はいつも電磁波の影響を受けています。
  • ストレス社会
    格差社会が日ごとに広がり、競争がますます激しくなっています。大人も子供もストレス、焦り、不安感に、常に苛まれています。

このような環境のため、現代人の体の働きは本来のパフォーマンスを発揮できていません。そのため、一部の生まれつき体がとても丈夫な人(スポーツ選手、運動好きの人など)を除いて、瀉法は体への負担が大きいように思います。おそらく多くの人にとっては、補法が合うのではないかと思います。

実は、補法でも瀉法と同じ効果があります

でも瀉法の方が効果が早くていいのでは、という意見もあると思います。確かに瀉法は効果を感じやすいという優れた点があります。ただ私の経験では、瀉法は、辛さを感じる部分は早く良くなりますが、一方で、他の部分に不具合が生じやすいように思います。やはり体全体で見ると、負担が大きいのでしょう。

実は、もう一点、補法をお勧めする理由があって、それは、補法でも瀉法と同じ効果を期待できるという点です。瀉法のように劇的ではありませんが、補法を持続的に行うと、体に悪影響を及ぼすものを、少しずつ排出することができます。

私の経験では、次のような効果がありました。

  • 長年続く便秘が解消した
  • 血の塊が出て生理が軽くなった
  • 肝臓にあった腫瘤が縮小した
  • 処置後に便意が生じて排便したところ、食あたりの腹痛が消失した
  • 軽い感染症(風邪、インフルエンザなど)が軽快した

このように補法も、適切に行うと、体を害するものを取り除くことができます。体に負担をかける瀉法をしなくても、定期的に補法を行うことで、十分健康を維持できるのではないかと思います。

急がなくてはならない時は瀉法をするべき

ただし、例外があります。それは急がなくてはならない時です。

すぐに処置が必要な時、病のスピードが早い時、重度の感染症の場合などは、手術や投薬などの瀉法を行うべきです。膀胱炎、気管支炎、副鼻腔炎などの感染症で、補法で改善が見られない時なども、抗生物質で早めに病原菌を除去した方がいいように思います。

ただそういった場合でも、補法を併用することで、治癒が早くなり、予後もいいようです。補法によって体の働きが正しくなるため、回復が促されるのでしょう。

まとめ

現代の生活環境は、私たちの体に負担をかけるものが多くあります。そのような社会に生きる私たちには、瀉法ではなく補法が合うように思います。健康を維持していくためには、定期的に補法の施術を受けることをお勧めします。

お断り

この文章で例を挙げた、「補法による効果」は、当院で行なっている、刺さない鍼での施術によるものであることをお断りしておきます。治療院ごとに治療内容と効果は異なりますので、ここで挙げた例は、東洋医学全体の見解ではないことをご承知おきください。