施術を通して、日々患者さんの体を見させていただいています。また、自分自身や家族の体も、毎日観察しています。ずっと見ていると気付くことがあって、それは、ほとんどの人に共通して疲れている内臓がある、ということです。
それはどこかというと、肺です。
私たち鍼灸師は、体の状態を確認するのに脈を見ます。現代医学の脈診では、主に脈の有無や、早さを見ると思いますが、東洋医学ではもう少し詳しく脈を観察します。内臓がどれくらい疲れているかを、脈で確認するのです。
そしてここ数年、というかもう10年以上、季節によらず、いつ誰の脈を見ても、肺の疲れが見受けられます。
どうして肺が疲れるのでしょうか。その原因はなんでしょうか。あくまでも推測ですが、私は大気汚染が関係しているように感じています。
大気汚染は、工業排煙、ゴミ焼却の排煙、自動車の排気ガスなどによる、空気の汚染のことです。これらに含まれる、体に害のある化学物質により空気が汚されているのです。またこれらに加えて、花粉や黄砂なども大気汚染の原因となります。花粉や黄砂は、花粉症などのアレルギーを引き起こしますが、最近では、これらに大気中の化学物質が付着して、アレルギーを持たない人にも影響を与えるものになってきています。
実際に、患者さんや自分自身の体を詳しく確認すると、肺の疲れがひどい人ほど、化学物質の影響を受けていることが分かります。このことからも、肺の疲れに大気汚染が関係しているのではないかと、思っています。
では、肺が疲れるとどうなるでしょうか。肺は酸素を取り込んで二酸化炭素を排出する、体のガス交換の場です。つまり肺に負担がかかると、このガス交換がスムーズに行われなくなるのです。そしてその影響は、肺だけでなく、他の内臓にも及ぶことが考えられます。施術においても、肺の状態を整えることで、他の内臓の働きが一気に良くなるのをよく目にします。
このようなことから、汚れた空気をなるべく吸わないように、気をつけるのがいいと思います。と言っても、汚れた空気の中から綺麗な空気だけをより分けて吸う、ということはできません。どうすればいいでしょうか。
私の経験では、室内では空気清浄機をしっかり使うこと、加えて、定期的に空気の綺麗なところに行ってリフレッシュすること、がいいように思います。
空気清浄機は、きちんと使えば効果があるように思います。自動モードよりも、できれば強モードにして、いつもしっかり動かすのがお勧めです。また、フィルターの掃除と、定期的にフィルターを交換することも忘れないようにしましょう。
また、空気の綺麗なところは、山間部や標高の高いところになると思います。そういった所に数日滞在すると、肺の負担が減って、体の働きが良くなるように感じます。宿泊は難しくても、日帰りでも十分効果はあるので、定期的に空気の綺麗な場所を訪れるのがお勧めです。
日常生活で肺の疲れを体感しておられる方は、それほど多くないと思います。ですが、体を見ると、ほとんどの方が肺の働きが低下しています。綺麗な空気に触れる機会を増やすことで、肺だけでなく、全身の働きが向上します。そのような習慣を日々の生活に取り入れるのも、健康のためには大切です。
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